たばこと健康に関するWHO神戸国際会議
『 神 戸 宣 言 』

(KOBE DECLARATION)

 

 我々、1999年11月に日本の神戸で『たばこと健康に関するWHO国際会議』に集った女性と若者のリーダー、非政府組織(NGO)代表、政府関係者、学者、保健専門家、科学者、および政策立案者は、次のことを深刻に懸念するものである。
1.  喫煙の流行は、公衆の健康に仮借ない災禍をもたらす。いかなる社会もその害から逃れることはできない。世界的には、既に2億人の女性喫煙者が存在し、たばこ会社は女性と少女に喫煙させるためのキャンペーンを世界的規模で積極的に行っている。2025年までに女性喫煙者の数はほぼ3倍になると予測されている。たばこは、その愛好者となった消費者を死に追いやる製品である。1日あたり11,000人、年間では400万人がたばこに関連した疾病が原因で死亡している。
 現在の傾向が続くならば、喫煙は地球上の病気の約10%を占め、死や障害を招く最も大きな原因となるという事態に世界は直面することになる。喫煙の危険性に対する包括的な解決策を見つけ、女性や少女の喫煙流行に手段を講じることが急務である。
2.  科学的な証拠が示した結論は、たばこは死や障害など、生涯にわたる健康問題の引き起こす多数の毒素を含むということである。女性喫煙者が肺がん、脳卒中、肺気腫などの生命にかかわる疾病に蝕まれる危険性が著しく増加している。さらに、たばこと環境たばこ煙(ETS)がもたらす女性特有のリスクとして、妊娠、出産への悪影響や妊娠中の合併症がある。
3.  たばこ関連疾病は、世界規模で罹患率を高め、持続可能な開発と全人類の幸福という目標に反するものである。たばこ使用は、世界経済に対し、年間2千億米ドルの純損失を生み、これらの損失の半分は低所得諸国で発生する。低所得諸国や農山漁村に住む女性や子供、特に貧しい国の中に生きる者に降りかかる人的、社会的、そして経済的なコストは計り知れないものがある。低所得の国々では経済構造調整政策により経済的苦境がもたらされ、保健や教育の資源が厳しく限られている最中に、多国籍たばこ会社がその触手を伸ばしてきている。
4.  多国籍たばこ会社は、隙がなくかつ考え抜かれた戦略を実施し、特に人口の多い発展途上国において、たばこのマーケットを女性や子供たちに広げようとしている。
 たばこ産業は、国際経済のグローバル化の過程を巧みに操っている。たばこ産業はたばこをあたかも健康・自由・痩身・現代性といったイメージと関連があるかのように売りつけている。
5.  各国政府や国際社会に課せられた緊急課題は、ジェンダーを考慮した効果的なたばこ抑制戦略を開発し、貧しい女性や少女を対象としたたばこ抑制プログラムに十分な資金を割り当てることである。増税やたばこ広告の禁止などの効果的な反たばこ戦略を実施してきた国がある一方、多くの政府は、生産者、輸出者、補助金供与者として未だにたばこ産業との直接の関係を有している。
  我々は、次のことを決議するものである。
6.  たばこ対策のための「枠組み条約」には、あらゆる側面から女性特有の問題と展望を踏まえ、女性の議定書を組み入れることを求める。条約とそれに関する議定書の作成と実施の監視にあたっては、女性の代表とNGOの積極的な参加を求める。条約とその関連議定書の批准については、留保なく、全ての加盟諸国の批准を求める。
7.  政府や民間部門に対し、たばこ産業への支援やたばこの輸出を中止させること、また、あらゆるたばこ製品に対し、価格の約2/3〜3/4の水準まで税率を引き上げるよう、財政政策を再構築することを勧告する。女性のための雇用機会を拡大し、たばこ生産を転換するプログラムを提供しうる政策を推進する。たばこ歳入の増加分は、たばこ抑制プログラムに充てるとともに、これまでたばこ産業より後援されてきた市民のスポーツ・文化行事に充てる。
8.  あらゆるメディアを通しての、また、あらゆる形の娯楽においてのたばこ産業による、直接的・間接的な広告、販売促進と後援活動を世界的に禁止することを求める。また、女性開放とたばこの使用を切り離すための反対広告を、どのような文化的背景であっても、確実に女性や少女にメッセージが届くような形で行うための公的資金を投入することを求める。たばこに係る登録ブランド・ロゴ・商標の商用使用やたばこの自動販売機は世界的に禁止されるべきである。
9.  社会における男女平等は、たばこ抑制戦略に不可欠な要素たるべきであり、かつ女性のリーダーシップは成功への必須条件である。
10.  異なる文化的背景における女性や少女の多様性と必要性を考慮した、女性に特化した戦略を開発する。この戦略には無煙環境の創出、環境たばこ煙(ETS)への暴露の低減および一般市民への啓発を促し、また、たばこの流行・喫煙開始・たばこ消費を低減させるための効果的な戦略の採用が盛り込まれるべきである。
11.  多面的なアプローチを通じてのたばこ製品に対する戦いに、NGO、コミュニティー、宗教団体、メディア、女性の青少年の組織、学会を動員する。
12.  あらゆるレベルの正規教育において、メディアからの情報を見分ける能力を含むたばこ抑制についての健康教育を行うことを要請する。たばこ抑制について、健康づくりの専門家のためのトレーニング・プログラムを開発する。女性の人的資源を開発したばこと戦うことのできる能力を向上させるための仕組みとして、女性全体に教育投資を行う。
13.  女性・少女とたばこについての研究や啓発活動に対する公的資金を増額する。そして研究結果を広く一般市民に還元する。
14. WHOの地域事務局ならびに加盟諸国の現地事務所において、WHO本部のたばこ抑制戦略を確実に展開する。WHOは世界規模の、特に移行期経済諸国ならびに低所得諸国において、最善策とすべきたばこ抑制情報・ガイドラインを考案し提供する。
15.  女性2000年会議:国連総会特別会議において、「女性と健康」と「女児」に対するたばこの悪影響と戦うための勧告を盛り込む。同様に、たばこ抑制のための環境対策を「2002年地球サミット」(国連環境開発会議)の検討・評価に、また、他の関連する国連国際会議のフォローアップ・セッションに取り込む。
16.  女性と子供の健康に対する権利の原則を人権として守る。また「子供サミット」、「国連環境開発会議」「国連人権会議」「国連人口開発会議」「社会サミット」「第4回世界女性会議」「国連人間環境センター」「食料サミット」の結果に基づき、さらに「自動の権利に関する条約(子供の権利条約)」「女子に対するたらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」「人権規約」「先住民保護のための宣言起草案」、ジェンダー・健康と開発・「アルマ・アタ宣言」を強調した「世界保健総会決議」の成果を土台とする。