仲野暢子 Nobuko Nakano
       
喫煙と健康女性会議/禁煙教育をすすめる会
                                
1510066 東京都渋谷区西原175

たばこと健康について私たちのコンセンサス作りを!

−「たばこ規制枠組み条約」政府間会議を傍聴して−

 

ご存知のように、「たばこ規制枠組み条約」(Framework Convention on Tobacco Control)はWHOが提案する国際条約で、気候変動枠組み条約や男女差別撤廃条約などと同様,国連で採択,各国の批准を経て実施にいたるものです。 WHOはたばこに起因する疾病・死が世界的に広がり、多国籍たばこ会社がさらに販路拡張を続けている事態を、一刻も猶予ならないと見て、2003年に条約の制定という目標を定め,交渉を重ねています。 

私たちの生命.健康に深く関わることですが、日本政府の現在の姿勢は、外圧をどうかわすかという次元で処理される危険性もあります。私たち自身の問題として、十分な情報を持ち、議論を深めていきたいです。国際的なNGO活動も活発で、今回の会議傍聴とロビイイングに、日本のNGOから参加するよう誘いがありましたが、なかなか出られる条件がなく、結局仲野が一人で参加しました。以下私がキャッチできた現地からの情報をご報告します。

「たばこ規制枠組み条約」第2回政府間交渉 4/305/5(ジュネーブ)

「広告全廃、街頭自販機撤去、絵入りの警告表示、値上げ」などに圧倒的な支持が集まった!

しかし、米国を先頭に中国・日本などから弱める提案もあり、交渉は形を変えてまだ続く。

@    たばこ規制枠組み条約(FCTCFramework Convention on Tobacco Control)の

2回政府間交渉は、加盟191か国中、160の国と地域が集まり、第1回交渉(昨年10月)の意見を集約して議長(Amorimブラジル国連大使)が妥協点として纏めた議長原案をもとに、それぞれの立場からきびしい議論をたたかわせた。以下原案と討論の経過を記します。

A    WHOはかねてから、「この条約は、国際的・国内的にも多くの関係機関の連係が必要で、また社会的にはNGOをはじめ、様々なグループの協力が必要」なことを強調しており、昨年は業界も含めた各界からのヒアリングを行ない、今回はNGO代表の正式オブザーバー参加を認めた。

各国のたばこ関係NGONGO Allianceを作り、専門性・地域性を生かして、予め提案書を発表し、共同して政府代表に働きかけ、また監視する役割を果たした。

私、仲野もその仲間に加えてもらいました。

B    会議は三つのワーキンググループに分かれて議論を進めた。

(T) 議長: フランス、タイ
内容: 法規制、製品・原材料開示と規制、広告、警告表示、青少年とたばこ、受動喫煙、依存治療
(U) 議長: カナダ、ジンバブエ、
内容: 調査、情報交換、税金・免税、補助金、密輸防止、経済と農作物転換
(V) 議長: ニュージーランド,エジプト
内容: 制度、実施、製造物責任、経済原理、財政的基盤科学/技術/法的分野での協力

C    各国代表は全員この条約の趣旨に賛成し、2003年実現に向けて協力すると述べた。

D    問題になった点

*価格/税金  

議長案の「価格及び税金はたばこ消費を減らす有効な手段である」ことは全員総論賛成。

密輸及び不正な取引」を防ぐため、「価格の差を縮める」という原案には異論もあった。

*免税たばこの禁止

多数賛成。米国と韓国が削除要求。

*たばこ栽培と製造のための補助金

「段階的に廃止する」原案に対し、賛成、代替作物等に力点をおいた議論も多かったが、

米国韓国原案削除を要求。

*受動喫煙を防ぐ(屋内労働の場、公共の場、公共輸送機関)

「非喫煙者に対して、法規制を含む組織的な保護制度を作る」原案に全員総論賛成。

日本法規制を除いた修正案を出した。

*たばことたばこ煙に含まれる原材料・含有物の公開と規制

大きい異論はなし。

*包装と警告表示

a)「低タール,ライト、ウルトラライト、マイルド」など、害が少ない印象を与える文言を

たばこ包装(箱,/袋)に書くことを禁止の原案に多数の賛成・強化意見の出る中で、
              米国は「明白な誤りまたは誤解を導くものに限り禁止」という修正案で、ライトなどの
              文言規定を避けた。(日本もそれに近い発言。)

b) その特性/健康影響/有害性/煙の成分など虚偽/誤認を招くような包装や表示禁止

基本的な異論なし

c) 販売単位(箱/袋その他)に政府は次の公式見解と製品情報を表示の原案に、

販売は1本単位が多いという途上国から、どうつけるかの疑問あり。

d)     各販売単位にはたばこが引き起こす障害の結果を表す絵/写真などを含む全体的な

警告を補足的な付録と共に表示する。警告は以下を含む。

@)18歳以下への販売の禁止

A)たばこ製品に含まれる有害物質、とくにタール、ニコチン、一酸化炭素など、

煙として放出されるものの計量についての表示

B)製品が販売される地域で使用される言語(複数でも)での表示

以上の原案に賛成や強化案が多数出た。18歳は、未成年とするべきという案もあり、警告表示に載せると、かえって青少年が背伸びをしたがるので、書かない方が良いとの意見も出た。中国は「主権を尊重せよ」、自国の規制に従えばよいの法律に従えばよいと主張した(マルボロの生産・輸出を計画しているという背景があると見られる)。
カナダは警告表示は輸出国の責任でつけることを主張。マレーシアなどは表面積の30 以上に警告表示をするよう主張した。

警告表示の必要性は全体が認めているが、具体的な文言や絵などについて、日本は保留。

 

*青少年対策

a)     教育、訓練、反たばこCMを含む社会的キャンペーン

@)有効なプログラムや教材・メディアの開発

A)未成年者をはじめ、心身が影響を受けやすい状態にある人々には、とくに情報伝達を

  徹底する必要がある。

B)情報の中に、たばこ産業の行為についても含める。

C)禁煙・防煙教育指導者用プログラム,訓練の開発・実施

D)種々の公的機関、NGOとの協力

b)  @)小売り業者は販売の際、18歳以上であるとの証明を求めること。

A)18歳以下の者が入手可能な場所に自動販売機を置いてはならない

 

以上の原案に異論はなかったが、18歳以下によるたばこ販売禁止については、一部途上国に
「子どもがバラ売りをしている現状をすぐに変えられない」との意見もあった。

自動販売機は全廃の意見も多いが、入手可能な場所の禁止について、日本など業界の抵抗が盛んになることが予想される。

 

* たばこ広告

a)  18歳以下に向けたすべての広告,販売促進活動,スポンサーシップは禁止

b)     18歳以上向けであっても、プレゼント、リベート、クーポン、試合参加資格その他の景品については、厳しい制限をつけ、社会全体にたばこ製品のアピールを減らする。

c)      たばこ会社に対し、広告,販売促進,スポンサー等にかけた費用の公開を求める。

d)     たばこ広告に、たばこおよび煙の害その他の事実を曲げたり、誤解を招いたりする表現を

使わないよう、規制を行なう。

e)     スポーツや文化行事のスポンサーシップについても、段階的に廃止するよう、規制する。

f)      衛星放送,インターネットなど、国境を越えた様々なメディアによるたばこ広告を廃止の

方向で規制する。

g)     上記を実現する議定書を準備する。

 

以上の原案について、18歳以下をターゲットという項では、反対が非常に多く、「たばこ産業に口実を与えるだけで、意味がない」、「子ども背伸びをしたがるのだから、20歳またはそれ以上向けであっても、広告は十分効果をあげる」ので、「年齢でなく全面禁止を」という意見が相次いだ。一部の国は「憲法に抵触するので、全面禁止はできない」との立場。

 

*たばこ依存と禁煙支援

プログラムの共有、開発、実施を行ない、たばこの需要を減らしていく

異論なし。

 

       供給面では、密輸/大掛かりな脱税売買グループへの対処
が議論された。
NGOの情報によると、世界の輸出たばこの3分の1(年間4千億本)は 密貿易によるという。これは各国にとっても、大きな損失に違いない。

 

*青少年対策その他の政策をたばこ販売業者に徹底するため、免許制度をとの原案

米国が反対意見。日本はすでに実施と答えた。

 

*製造物責任と補償について

今後の議論に続く(ここまでフォローできなかった=仲野)

 

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議長案がかなりな妥協の産物だと、カナダ、タイの政府やNGOは不満を持っている。

Amorim氏はできるだけ対策を進めることと、多くの国が批准することを念頭において

私のギリギリの判断だと語った。

 

その他に印象的だったのは,「生命・健康は、貿易自由化の原則だけで処理しないで、新たな原則を合意すべき」が政府間会議の大多数の賛成を得ていたことと、「食べていくにも困難な途上国を、たばこでこれ以上搾取しないでほしい」という途上国NGOの訴えです。

また子どもの人権の問題としての視点からも、たばこの害が取り上げられていました。途上国で 子どもをターゲットにした宣伝(玩具やキャラクターによる接近)には、日本も関わっています。

各国とも受動喫煙が「児童虐待」にあたるということも、共感を得ていました。マイカーも子どもがいる時は禁煙との法規制もすでにあります(オーストラリア)。

枠組み条約FCTCは、政府だけでなく、個人の問題でもあり、社会的関心と協力の仕組みを必要とします。各国の取り組み方と、日本のそれとの間の、あまりの温度差に愕然としました。

また今回の交渉には、法律と権限を一手に集めている財務省は参加せず、日本政府の態度は保留が多かったので、これからの行方を私たちは見守るだけでなく、大いに関わっていかなければと思います。力をかしてください。

 

喫煙と健康女性会議

仲野暢子 Nobuko Nakano